株式報酬制度について(前編)

02/25/2021

様々な候補者様、企業様とお話しをする中で避けては通れないのは「報酬」である。そしてその「報酬」の形態が最近は多様化してきている。特にIT企業、中でもエクゼクティブ採用となると、キャッシュ(年収)だけでなく、株式報酬とパッケージにした形でオファーを提示することも多い。またスタートアップ企業においてはキャッシュリッチな大手企業比べ、サラリーとして魅力的な金額を提示することも難しく、将来性を買ってもらう形でのストックオプションの付与を武器として使うケースもある。一見、魅力的にも映る「株式報酬」だが、正しく株式報酬制度を理解できているのだろうか。
例えば、あなたが転職を検討していて、複数社から内定を獲得したとしよう。もちろん仕事内容やチャレンジができる環境かといった点も比較するだろうが、オファー条件も重要な物差しになるはずである。もし、そのオファー条件が下記のような場合、あなたはどの企業の条件を一番魅力的に感じるだろうか。

A社(未上場企業)年収1000万円+株式報酬(SO:ストックオプション:3000万円分)
B社(上場企業)年収2000万円(株式報酬なし)
C社(上場企業)年収800万円+株式報酬(RSU:リストリクテッド・ストック・ユニット:1500万円分)

もしあなたが自身にとってどの選択肢が一番ベストか即時に判断できる場合は、株式報酬について理解できていると言っていい。しかし、”なんとなく”SOについて、RSUについては知っていても、それぞれの特徴は何か理解した上で判断できない場合は、ぜひこれから書く内容を参考にしてもらいたい。本稿では、前編と後編に分けて話をしていく。前編は株式報酬制度の中でも特にストックオプションにフォーカスして掘り下げ、後編として残りの制度を掘り下げていく。

株式報酬の種類

株式報酬にもいくつか種類が存在する。代表的なものは下記3つだ。

  • ストック・オプション(以下SO)
  • リストリクテッド・ストック(特定譲渡制限付株式)
  • パフォーマンス・シェア(業績連動株式報酬)

なんだたったの3つか!と思ったら大きな間違いである。それぞれさらに派生した複数の種類が存在し、株式報酬を受け取る側にとっては違いが大きいため、ぜひ違いを理解しておいてほしい。

ストックオプション

ストックオプション(以下SO)は新株予約権の一種で、その株式会社に属する役員や従業員が事前に決めた価格(権利行使価格)で自社株を取得できる「”権利”」のことである。特徴としては、株式市場における株価に左右されず予め設定された行使価格で取得できるため、市場価格が上昇していれば、行使価格で購入した株式を売却することでキャピタルゲインを得られるメリットがある。もちろん、行使価格より市場価格が下回ってしまった場合には損をしてしまう。事業成長が市場における株価の上昇に直結するため、それが従業員のモチベーション向上にもつながる。ただし、1点注意してほしいのは、あくまで”権利”という点である。株式そのものを付与されるわけではないため、取得には相応の金額を払うケースもあるし、株式取得前に退職してしまうと権利消失し、売出し前の金額での取得ができなくなってしまう。オファー時に説明される「SOがxxxx万円分」といった部分を鵜呑みにせず、SOの種類を確認し、自身のケースに当てはめよう。
また、このSOの種類は課税の有無やタイミング、付与の仕方により以下のように細かく分類される。

それぞれのSOの種類について特徴を説明していく。

無償SO(税制適格SO/税制非適格SO)

無償SOの中でも税制適格SOは権利行使時の課税が発生しない税制優遇処置を受けたもの。ただし、税制適格となるには、以下のような厳しい適格条件をクリアする必要がある。

  • 発行形態:無償で発行されること
  • 付与対象者:自社や関連会社の役員あるいは従業員(監査役、大株主は除外)
  • 権利行使価格:年間権利行使価格が1200万円未満かつ、付与時の株価以上
  • 行使期間:付与決議から2年~10年以内の間に、権利を行使する必要あり

これら以外にも細かい条件をクリアする必要があるが、大きなメリットとしてはSO付与される側(従業員・役員)は株式を無償で取得でき、かつは課税負担が少なくなる部分である。逆に税制非適格SOはこういった条件はないものの、権利行使時(株式取得時)と売却時に税負担が必要なため、転職希望者としては入社前にチェックしておくことをお勧めする。

有償SO

有償SOはその名の通り、発行されたSOを発行価格にて従業員・役員が購入するタイプのものである。重要な点はあくまでSOつまり”株を買う権利”に対し、支払いを行うため、権利行使時には別途、行使価格で購入する必要がある。メリットとしてはSO付与される側(従業員・役員)の税負担が低くなることである。税制適格SOと同じように行使時の税負担が必要なく、売却時にのみ課税される。ただし、SOを購入し、さらに権利行使する資金余力のある者でしか恩恵を受けられないため、注意が必要である。

信託型SO

信託型SOはこれまで説明したSOとは大きく異なる部分がある。それは、付与対象者にSOを直接付与するのではなく、ポイント(将来SOに交換できるもの)を代わりに付与し、ある一定期間が終了したタイミングでポイントに応じてSOが割り振られる、という点である。通常のSOは、発行タイミングの株価を権利行使価格に設定するため、入社タイミングが早いメンバーほどレバレッジが効きやすい。しかし、必ずしも入社タイミングが早い=企業の成長に貢献しているとは限らず、従業員のモチベーション低下を招きかねない。また、企業にとってもSOを何度も発行することは大きな負担となるが、この信託型SOはこうした課題をクリアするために生まれたものである。つまり、信託型SOの場合はポイントとしてメンバーに付与するため、入社タイミングに関わらず有利な権利行使価格のSOを取得でき、かつSOの発行自体も最小限に抑えることができるものである。転職希望者の視点で考えると、IPOを直前に控えた企業のオファー条件としてSOを提示されても、タイミング的にSOの価値が希薄している、あるいはそもそもSOの発行が終わっているなど金銭的なメリットを感じなくなるだろう。しかし、この信託型SOについては入社タイミングに関わらず事業成長への貢献で金銭的メリットを享受できるため、魅力を感じる可能性は高い

以上のように、ストックオプションだけでも複数種類存在する。オファー条件としてストックオプションが記載されていたとしても、どのタイプのものか確認し、それぞれの特徴を理解した上で、意思決定をしていくことが重要だ。
次回は「リストリクテッド・ストック」「パフォーマンス・シェア」を深堀し、株式報酬制度全体の理解を進めていきたい。

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