株式報酬制度について(後編)

03/09/2021

今回は「株式報酬制度について」の後編として、解説ができなかった「リストリクテッド・ストック(特定譲渡制限付株式)」、「パフォーマンス・シェア(業績連動株式報酬)」について掘り下げていく。尚、「株式報酬制度(前編)」ではストック・オプションについて解説しているので、まだ見ていない場合は先にこちらを一読頂きたい。

ストック・オプションについて掘り下げています

ストック・オプションとの違い

前編で解説したストック・オプション(以下SO)はあくまで”ある一定の価格(行使価格)で株式を取得できる権利”であるのに対し、リストリクテッド・ストック、パフォーマンス・シェアは”株式そのもの”を受け取ることができる。受け取る側からすると、SOは権利行使時点での株価が行使価格を下回ってしまっていると、インセンティブとしてのメリットが消えてしまうリスクがある。しかし、株式そのものを付与される後者はたとえ株価が下落した場合でも、一定の利益を得ることができる。SOの方がメリットが少なそうに見えるが、株式そのものを付与する制度に比べ、SOの方が付与数が多くなることが多い(これは株式そのものに比べて、SOの価値<公正価値>が低く、多く付与できるため)。そのため、未上場企業等の今後株価が大きく伸びる可能性が高い企業の場合はSOにより享受できるインセンティブはかなり大きくなる。ちなみに、一般的に未上場企業で株式そのものを付与するリストリクテッド・ストックなどを運用するケースは珍しく、ほとんどがSOであろう。上場企業では、株式そのものを付与する運用が多いが、未上場企業のように大きく株価が伸びる可能性は小さく、SOほどのインセンティブは発生しにくい。(もちろん、上場企業であってもSOを付与するケースもある)

リストリクテッド・ストックとパフォーマンス・シェアの種類

「リストリクテッド・ストック(特定譲渡制限付株式)」、「パフォーマンス・シェア(業績連動株式報酬)」もSO同様、以下の通り複数種類(2種類)に分かれる。

それぞれの特徴について、

RSとRSU

RS

リストリクテッド・ストック(RS)は一定の譲渡制限が付いた株式を付与するもの*1で、付与されたタイミングでは他人に譲渡できない、つまり株式の売却はできない。一般に譲渡制限(条件)としては、付与された側がどのくらい継続勤務するか、など期間が定められており、人材のリテンションに効果を発揮する。逆にこの譲渡制限(条件)を満たすことができなければ、没収されるような設計になっていることが多い。ちなみに、譲渡制限は付いているものの、株式そのものは保有しているため、配当金を受け取れるメリットもある。
*1:厳密には金銭報酬債券を支給され、それを現物出資財産として払い込むことで取得する

RSU

リストリクテッド・ストック・ユニット(RSU)はRSのように譲渡制限付きの株式を事前に付与するのではなく、一定の制限(こちらも一般的には継続勤務期間)を設け、その後に株式を付与するものである(ただし、事前にユニットとして権利付与される)。こちらは付与されたタイミングで譲渡可能であるため売却はできるが、RSのように事前に付与されているわけではないので、制限期間中は配当金は受け取れない。

PSとPSU

PS

パフォーマンス・シェア(PS)は業績連動型の株式報酬で、RS同様に譲渡制限のかかった株式を付与されるものであるが、こちらの制限は勤務期間ではなく、一定期間で定めた業績目標の達成度合いで制限が解除される株数が決まる。そのため、RSに比べて貢献度合いがよりダイレクトに反映される仕組みとなっている。

PSU

パフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)はRSU同様に事後に株式が付与されるもので、一定期間で定めた業績目標の達成度合いに応じて、株数が決まり、付与される。

番外編(従業員持株会)

株式報酬の代表例として取り上げてはいなかったが、従業員持株会を取り入れる企業もあるため、番外編として補足する。なお、持株会には従業員向け以外にも役員向け、取引先向けなど種類があるが今回は割愛する。

従業員持株会はこれまで解説した株式報酬とは異なり、個人として自社の株式を取得するのではなく、持株会を通じて取得するものである。取得については個人の任意であるが、取得したい場合は給与や賞与から一定額を天引きし、集めた資金で株式を取得する。また、取得に際し企業側から奨励金が支給されるなどのサポートが入る。そのため、ボーナス・インセンティブ色の強いこれまでの株式報酬に比べて、従業員持株会は福利厚生としての色が強い。
持株会を通じ、少額からでも株式を取得でき、拠出額に応じて配当金も得られるメリットがある一方で、もちろん注意しなければならない点もある。それは、株式の売却である。あくまで持株会を通じて取得しているため、もしあなたが株式を売却したい場合、一度自身の証券口座に出庫しなければならない。さらに、取引の単位である単元株に達していないと出庫ができない。もし、単元株に達していないが現金に換えたい場合は、持株会を解約し、買取してもらう必要がある。なお、解約した場合は持株会に再加入できないケースがあるので、判断は慎重に行う必要がある。

株式報酬採用企業例

参考までにそれぞれの株式報酬制度を採用する企業例を掲載する

SO(過去採用企業も含む)

ソフトバンク、ファーストリテイリング、UUUM、メルカリなど

RS/RSU(過去採用企業も含む)

ソフトバンク、パナソニック、メルカリ、google、amazonなど

PS/PSU(過去採用企業も含む)

伊藤忠商事、ヤマトホールディングス、りそなホールディングス、東芝など

従業員持株会(過去採用企業も含む)

NRI、リクルートホールディングス、京セラなど

まとめ

前編後編とそれぞれの株式報酬について、受け取る側の目線で解説をしてきた。理解できたか、前編冒頭の3つの選択肢について改めて見てみよう。

A社(未上場企業)年収1000万円+株式報酬(SO:ストックオプション:3000万円分)
B社(上場企業)年収2000万円(株式報酬なし)
C社(上場企業)年収800万円+株式報酬(RSU:リストリクテッド・ストック・ユニット:1500万円分)

理解を深めた上で、自身のケースに当てはめていくと最初とは違った回答になるかもしれない。また、これを1年後に見ても選ぶ選択肢は変わるだろう。重要なことは、現在そしてこれからの自身にとって、どれが最良の条件となるかを考え、それを選択できることだ。
本当にあなたが転職をすることになった時には、ぜひもう一度この記事を読みこみ、理解した上で最良の選択をしてもらいたい。もちろん、報酬面だけでなく、様々な要素を比較し、答えを出すであろう。
我々Pole&Lineはあなたが最良のキャリアを選択できるよう支援もしているので、ぜひ相談して欲しい。

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