Case Study 内製開発組織の立ち上げから拡大まで、採用と組織設計を一貫して支援
東京ガス株式会社
日本最大の都市ガス事業者であり、国内外に様々な総合エネルギーソリューションを展開している。

DX推進部 デジタル開発グループ マネージャー
藤田 貴幸様
Slerでプログラマーとしてキャリアを開始後、2010年に東京ガスグループの東京ガスiネットへ入社。ガス導管のシステム開発などを経て、東京ガスへ出向。東京ガスのサービス開発の内製化を推進するエンジニア組織を率いる。
DX推進部 DX統括グループ マネージャー
市ヶ谷 真紀子様
新卒で東京ガスに入社後、20年以上にわたり電力事業の立ち上げや地域エネルギー供給事業の企画などに従事。ビジネスサイドでの豊富な経験を活かし、2024年度より現職。全社のDX推進やDX人材戦略の策定を担う。
140年以上の歴史を持つ総合エネルギー企業、東京ガス株式会社(以下 東京ガス)。同社は今、従来のガスや電気を「売る」だけでなく、自社の手で新しい「サービスを創り出す」企業への転換という、壮大な変革に挑んでいます。その中核を担うのが、DXの推進と、自社の手で迅速にサービスを開発する「内製開発組織」の強化です。
Pole&Lineでは、この変革を人材の側面から支援するため、2021年よりパートナーを務めています。高度なエンジニア人材の採用が急務となる一方、社内には専門人材の採用ノウハウが十分ではなかった当初の課題に対し、単なる人材紹介に留まらない、採用戦略の設計から組織に関するコンサルティングまで、多岐にわたるご支援をさせていただきました。
壮大な変革の裏側で、Pole&Lineはどのように関わり、両社の間にはどのようなパートナーシップが築かれていったのか。東京ガスの変革を牽引するDX推進部の藤田様と市ヶ谷様にお話を伺いました。
DX推進のスピード感を高めるため内製開発へシフト
-多くの方は東京ガスに「安定」のイメージを持つ一方、近年は大きな「変革」に挑まれているかと思います。具体的に、どのような挑戦をされているのか、改めてお聞かせいただけますか?
藤田様:
おっしゃる通り、これまでの私たちのビジネスは、ガスや電気というエネルギーを安定的にお届けし、販売することが中心でした。しかし、これからの時代、それだけではお客さまの期待に応え続けることは難しいと考えています。今後はエネルギー供給に留まらない、暮らしを豊かにするような新しいサービスを自ら創り出し、提供していかなければなりません。
サービスを創る上で非常に重要なのがスピード感です。従来のように外部のパートナー企業に開発を委託するやり方では、アイデアを形にして素早く世の中に問い、改善していく、というスピード感についていくことができません。そこで、企画から開発、運用までを自分たちの組織内で行う、内製開発へと舵を切ることにしました。私が責任者を務めるDX推進部デジタル開発グループが、まさにその要となっています。

-会社全体として、DX推進はどのように位置づけられているのでしょうか?
市ヶ谷様:
これは単なる一部門の取り組みではありません。現社長は就任以来、DXを事業の中心に据えることを強いメッセージとして発信しています。
「本業の傍らでDXもやる」という考え方ではなく、「DXを推進すること自体が、事業の価値を新たに生み出していく」という思想がトップから明確に示され、AIの活用なども事業を進める上で当たり前に使うものとの前提になっています。そのような中、我々DX推進部は、全社横断のCoEとして内製開発機能を有し、AI活用やDXの加速を支援しています。
不完全で未開拓な環境だからこその面白さ
-会社全体で挑戦を進める強い意志がある一方で、やはり歴史ある企業ならではの難しさもあるかと存じます。その点についてもお聞かせいただけますか?
藤田様:
はい、正直に申し上げて、乗り越えるべき課題は数多くあります。技術的な面で言えば、遠い過去に開発した古いシステムがまだ点在しており、それらを現代的な技術へ刷新していく必要があります。
そもそも社内に存在するシステムの数が非常に多いことも大きな課題です。私たちが把握しているだけでも280以上のシステムがあり、実態としてはさらに多くの「野良システム」が存在する可能性があります。これらを整理していくのは、非常に骨の折れる作業であることは間違いありません。
-非常に重い課題があるからこそ、一般的な「安定」を求めて入社される方とは、ミスマッチが起きてしまいますよね。
市ヶ谷様:
まさしく、その通りです。私たちが求めているのは、いわゆる「安定企業だから」という理由で当社を選ぶ方ではありません。東京ガスは、藤田が話したような重たい荷物を抱えながら変わろうとしている。これには、大きなパワーが必要です。
「この会社を、自分が変えてみたい」という強い意志がなければ、途中で頓挫してしまうかもしれません。だからこそ私たちは、外から来てくださる方に、変革の原動力となっていただくことを期待しています。

-改めて、そうした気概のある候補者の方々にとって、これからの東京ガスで働く面白さとは何でしょうか?
藤田様:
エンジニアが活躍できる環境として、私たちの組織はまだまだ不完全というのが正直なところです。開発環境の整備なども、メンバーからの要望を受けて一つひとつ対応している最中です。だからこそ、積極的に意見を出し、理想の環境を作っていくプロセスから共に楽しんでくれる方に来ていただきたいと強く願っています。
市ヶ谷様:
大きな課題の裏側には、他社では得られない可能性があります。私たちのサービスは、ガスで約900万件、電気で約400万件という非常に多くのお客さまにご利用いただいています。この顧客基盤と膨大なデータを活用し、いかに新たな価値を生み出せるか。それに挑戦できるのが、東京ガスで働く最大の魅力だと考えています。
寄り添うが、忖度はしないPole&Lineの支援
-変革の原動力となる人材を採用するのは、そう簡単ではなかったかと思います。改めて、当初の採用活動ではどのような課題に直面されていたか、お聞かせください。
藤田様:
そもそも東京ガスとして、中途でITエンジニアを本格的に採用した実績がほとんどない、というのが最初の課題でした。社内にノウハウが存在せず、何もかも手探りの状態だったのです。そのため、様々な採用パートナー企業にご協力いただいていましたが、どこか私たちの要望から「少しずれているな」と感じるケースも多くありました。
一方で、Pole&Lineの古市さんからご紹介いただく候補者の方は、いつも私たちの要望の芯を食っていて、求める人物像に非常に近く、驚きました。他社との違いはどこから来るのかと言えば、私たちの事業の状況や大切にしている考えに対する理解の深さ、それに尽きるのではないでしょうか。
市ヶ谷様:
古市さんは、東京ガスのファンですよね。とても深い理解度から、それが伝わってきます。私たち自身も気づいていない東京ガスの可能性や魅力を客観的な視点から発掘し、候補者の方へ熱意をもって伝えてくださっています。だからこそ、当初は転職を考えていなかったような優秀な方の心をも動かすことができるのだと思います。

-光栄です。私とは別の者が組織設計についてアドバイザリー支援をさせていただいたこともありましたが、そちらについてはいかがでしたか?
市ヶ谷様:
そうですね。内製開発のエンジニアが増えていく中で「将来的にどのようなエンジニア組織を目指していくべきか」という課題に直面し、Pole&Lineさんに人材紹介とは別でご相談しました。このまま社内にエンジニア組織を置くのがいいのか、あるいは別会社を設立したほうがいいのか等です。
社内で議論していると、どうしても今ある組織に縛られてしまいがちですが、Pole&Lineさんは他社の事例を交えながら各選択肢のメリット・デメリットをフラットに提示し、私たちの思考の整理を助けてくれました。特に感謝しているのは、当社と同様の日系大手企業で組織改革を経験された有識者を実際にご紹介いただき、私たちが直接お話を伺う機会を設けてくださったことです。
こうしたリアルな情報に触れるプロセスを通じて、組織の形態といった表面的な課題だけではなく、乗り越えるべき課題の本質は何か、という重要な視点を得ることができました。

開発組織の拡大に伴うエンジニア採用の変化と未来
-当初に比べると御社内の開発組織も形になってきているかと思いますが、Pole&Lineがご紹介した方々は、実際どのように活躍されていますか?
市ヶ谷様:
Pole&Lineさんからの紹介で入社した方は、いずれも当社の重要なプロジェクトにおいて大きな成果を出し、欠かせない存在となっています。それに加えて、私たちが非常に価値を感じているのが、組織文化への好影響です。
例えば、私たちはこれまで外部の技術カンファレンスに積極的に参加するという発想自体がありませんでした。しかし、新しく入社された方が主体となってそうした場への参加や交流を促し、組織内に刺激を与えて、新たな文化が生まれ始めています。

-エンジニア採用における、将来的な展望についてもお伺いしてもよろしいでしょうか?
藤田様:
これまでは、まず手を動かせるエンジニアの採用を中心に採用を進めてきましたが、デジタル開発グループの内製開発メンバーが35名規模まで拡大してきた今 、新たな役割を担う人材も必要になってきました。
具体的には、チームを束ねてパフォーマンスを最大化できるようなエンジニアリングマネージャー、技術戦略を実行可能な形に落とし込み推進力を高めるためのVPoEといった、より高度なマネジメント層の採用が次の大きなテーマです。開発組織を一段上に進化させるためにも、こうした方々の力が不可欠だと考えています。

-ぜひ引き続き開発組織の成長をご支援できればと考えておりますが、Pole&Lineに今後一層ご期待されていることはございますか?
市ヶ谷様:
今後も組織フェーズの変化に伴って、採用したい人材像も移り変わっていく可能性はありますから、その度に「どういった人材が必要なのか」「どんな人が今の東京ガスにマッチするのか」といった部分から引き続き相談していければと考えています。
理想の組織像に対して、まだ3割程度の地点にいるというのが私たちの認識です。まだまだ課題は多くありますが、ぜひ今後も共に挑んでいただきたいですね。
-ありがとうございました。これからも東京ガス様の変革を支援していけることを楽しみにしております。
