リテーナーサーチとは?費用相場・成果報酬型との違いを解説
リテーナーサーチとは、契約時に着手金(リテーナーフィー)が発生し、ヘッドハンターが候補者のサーチからアプローチ、動機づけ、クロージングまでを一貫して担い、依頼企業の採用実現にコミットするサーチ型の採用手法です。
欧米のエグゼクティブサーチファームで発展してきた手法で、従来は経営層や重要ポストの採用に用いられることが一般的でした。近年では役職上位に限らず、「確実に採用したいポジション」や「採用難易度が高いポジション」にも活用が広がっています。
- CxOや役員クラスの募集を出しても応募がこない
- リーダークラスの募集が複数あるが、オファーを出しても他社にすぐ取られてしまう
- ダイレクトソーシングを頑張っているが、なかなか採用に結びつかない
- 多数のエージェントに依頼しているが、ターゲット層を紹介してもらえない
こうした採用の壁に直面している場合、リテーナーサーチは有効な選択肢の一つです。本記事では、費用相場、成果報酬型との違い、契約前に確認すべきポイントを解説します。
リテーナーサーチの仕組み
成果報酬型の人材紹介が「良い人がいたら紹介する」スタンスであるのに対し、リテーナーサーチは企業が求める人材像を起点に、その採用を実現するまでヘッドハンターがコミットして動きます。契約の段階で着手金が発生し、その案件にリソースを集中投入します。候補者のサーチ、コンタクト、関心喚起、応募動機づけといったプロセスを一気通貫で担い、単なる紹介ではなく「探し出し、口説き、動かす」まで責任を持つのがこの手法です。
リテーナーの最大のメリットは、採用ターゲットへの確実なアプローチです。売り手市場では同じ候補者を複数の企業が取り合いますが、成果報酬型のエージェントは候補者の意向を優先して動く傾向が強く、必ずしも依頼企業の採用成功にコミットするわけではありません。リテーナーでは依頼企業の採用実現をゴールに設定し、ターゲット人材への直接的かつ戦略的なアプローチが可能になります。
ロングリストとショートリスト
従来のリテーナーサーチでは、候補者を絞り込む前に二段階のリストを作成します。
- ロングリスト:採用企業との打ち合わせを経て、サーチファームがターゲットとなりうる候補者を広くリストアップしたもの
- ショートリスト:ロングリストをもとに、採用企業が「この人に会いたい」「今回は違う」と選別したもの
ショートリストに載った候補者は一次面接に進み、相対比較のうえ優先順位をつけ、上位の候補者から順にオファーを出して承諾を目指します。これが基本的な流れです。
近年の傾向
近年のリテーナーサーチは、経営層に限らずリーダー層・マネジャークラスの採用にも広がっています。「採用ターゲット像は明確で、どの企業や業界にいるかも把握しているが、自社への関心を持ってもらえない・認知されていない」という課題への対応策として活用されるケースが増えています。
また、ロングリスト/ショートリストのような伝統的プロセスに限らず、契約期間中は継続的にスカウトを送り、良い人がいれば随時紹介する方式も「リテーナー」として扱われます。特に成長企業や大手IT企業では、採用成功にコミットした工数アウトソースのプロジェクトとして活用されることが多くなっています。
成果報酬型との違い
最大の違いは、依頼企業の採用成功をゴールに設定するかどうかです。
| 成果報酬型人材紹介 | リテーナーサーチ | |
|---|---|---|
| 費用発生タイミング | 採用決定時のみ | 契約時に着手金、以降フェーズごと |
| 費用の目安 | 理論年収の30〜35%程度 | 着手金100万〜900万円+契約形態による |
| コミットの対象 | 候補者の転職成功に寄りがち | 依頼企業の採用成功 |
| 動き方 | 良い人がいたら紹介 | ターゲット起点でサーチ・動機づけ・クロージングまで一貫 |
| 並行依頼 | 複数エージェント同時可 | 原則1社独占(エクスクルーシブ) |
| 向くケース | 公募可・条件に市場競争力がある・母集団形成型 | 重要ポスト・秘匿案件・希少人材・競争の激しい市場 |
| リスク | 決まらなくてもコストゼロ | 不成立でも費用が発生 |
成果報酬型で十分機能するケース
- 求人条件や企業ブランドが市場で一定の強みを持っている
- 公募可能で秘匿性の必要がない
- 幅広いバックグラウンドの人材を受け入れられる
- 採用できなくても事業上の影響が軽微
リテーナーサーチが特に有効なケース
- 重要ポストやハイレベル人材の採用:秘匿性が高く、候補者リスト作成から個別アプローチまで緻密な動きが必要な場合
- 時間的制約が厳しい場合:1日でも早く採用を確定させたいプロジェクトや事業フェーズ
- 希少人材の口説き落としが必要な場合:市場に出回らない人材への直接交渉や動機づけが求められる場合
- 採用競争が激しい市場:対象者は存在しても他社に奪われるリスクが高く、能動的な惹きつけが不可欠な場合
「候補者が集まるかどうか」ではなく、「狙った人を確実に採る」ための設計が前提となる。ここが成果報酬型との本質的な違いです。
費用相場と契約形態
着手金の相場感
- 外資系大手ファーム:着手金900万円前後といった高額なケースもあります
- 国内ブティック型:300〜500万円が一般的です
- 特定領域・ベンチャー支援型:100〜200万円程度のリーズナブルなサービスも近年増えています
なお、ヘッドハンティングに自信を持っているファームでは、安価な提示はあまり行われない傾向があります。
支払いパターン
- 3分割方式:契約時、ショートリスト提示時、決定時の3回に分けて請求。進捗に合わせた支払い管理が可能
- 2回払い方式:契約時と決定時の2回。請求・支払い手続きを簡略化したい場合に選ばれる
- 細分化方式:ロングリスト提示、ショートリスト提示、初回面接、オファーなど複数フェーズに分けて請求(少数派)
金額算出方式
- %形式:採用予定候補者へのオファー額を事前にある程度決め、その年収の一定割合(例:35%)を請求する方式。ジョブ型で募集ポジションの年収を固定できる場合に向きます。一方、オファー額を柔軟に検討したい場合や、リーダーからCxO候補まで幅広く狙う場合には適さないケースもあります
- 固定額形式:契約時、リスト提示、初回面接、決定時などのフェーズごとに一定額(例:各200万円)を請求する方式。オファー額が変動しても採用費用を固定できるメリットがあります
契約前に確認すべきポイント
リテーナー契約は「採用が決まらなくても費用が発生する」契約です。条件や期待値のすり合わせを曖昧にしたままスタートすると、時間も費用も投じたのに1人も決まらなかった、という結果になりかねません。成果報酬型であればコストゼロで済んだはずが、リテーナーでは費用だけが発生することになります。
こうした事態を避けるには、まず市場状況と採用要件の整合性を事前に確認すること、そして契約期間中は定期的に進捗レビューを行い、候補者層やアプローチ方法を軌道修正していく仕組みが必要です。加えて、契約前に以下を確認してください。
- 候補者数・スピード感:契約から面接設定まで、どの程度の人数をどのくらいの期間で提示できるのか。想定を明確にしておく
- 不成立時の取り扱い:採用が決まらなかった場合の延長規定、追加費用、延長期間をあらかじめ取り決めておく
- 独占紹介期間(エクスクルーシブ):契約期間中、他チャネル経由で採用しても費用が発生する場合がある。対象範囲と条件を明確化し、認識の齟齬を防ぐ
なお、最終候補者まで絞り込んだ段階で、オファー前の最後の確認としてリファレンスチェックを併用する企業も増えています。リテーナーサーチのような失敗できない採用ほど、意思決定前の客観的な確認が有効です。
よくある質問
リテーナーサーチの着手金の相場はいくらですか?
採用できなかった場合も費用はかかりますか?
成果報酬型の人材紹介と何が違いますか?
役員クラスでなくても利用できますか?
契約期間中に他のチャネルで採用した場合はどうなりますか?
サーチファームはどう選べばよいですか?
Pole&Lineのリテーナーサーチ
Pole&Lineは、東京・恵比寿のブティック型エグゼクティブサーチファームとして、リテーナー型の人材紹介サービスを提供しています。多くのビジネスにおいて最も大きな損失は、「ターゲット人材を採用できなかったことによる事業機会の喪失」です。この影響は、経営や事業の重要局面であればあるほど重くなります。
ただし、リテーナーを利用すれば必ず採用できるわけではありません。手法やヘッドハンターの力量だけでなく、採用要件と市場の実態とのズレが結果を左右します。だからこそPole&Lineでは、契約前の要件定義と市場検証を重視し、双方の認識を合わせたうえでプロジェクトを設計します。
リテーナーサーチの具体的な事例や設計方法にご関心のある方は、お気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちら執筆:Pole&Line合同会社 代表 齋藤正樹